モデルを引き受けた彼女らは、それぞれ異なる人生を歩んできた。
しかし、同じソフトスムース素材に身を包んだ瞬間、
同一の境界線を持つ存在へと変わり、
ほんのしばらくの間、元の場所には戻れなくなる。

顔は覆われ、個性は消え、
声にならない輪郭までもが曖昧になり、
外界との接点は薄皮一枚にまで削ぎ落とされる。
そこに残るのは「個人」ではなく、
役割を引き受けた身体だけだ。

無防備で、どこか危うい。
それでも二人は、こちらの意図を読み取り、
求められるであろうポーズを探し、差し出す。
見る者の視線を拒まぬその健気さには、
正直、企画したこちらも当惑し、
視線を引き戻す理由を失ってしまう。
覆われているからこその不自由さ。
自分の意思を一歩引き渡す可憐さ。
しかし、それらを内包したまま
本人たちの「変身している」という確かな興奮が、
確実にこちら側へと伝わってくる。
一方、タイツの下では、人は等しく匿名で、等しく可塑的だ。
社会的な肩書きも、日常の役割も、ここには届かない。
ただ、何者にでもなれる可能性だけが、
黒く、滑らかに存在している。
それは日常から隔絶された場所でありながら、
人間の奥底に潜む欲望を、
最も率直に映し出しているのかもしれない。
着ている本人、それを見ている外界の誰のものとも言えない形で。

※この文章はフィクションです。実際の人物や団体などとは関係はありません。
